プラスチック代替としての草ストローの課題と展望

Author: ktakeuchi

草ストローはアンペラ(Lepironia articulata)の葉を乾燥させて作ったストローになります。
その特徴はなんと言っても茎が筒状になっていることで、茎を切って乾かし、20センチほどにカットして作成します。
Grass strawやGreen strawとして紹介されています。

価格

1本あたり0.05ドルほどです。竹ストローに比べて加工が容易で、半分がた工業製品なので、ロットが多いほど量産効果が出ます。
米粉ストローの2倍から5倍。プラスチックストローの50倍ということになります。

耐久性

温水で30分、冷水で2時間の耐久性を持ちます。これは米粉ストローとほぼ同じということになります。
しかし、米粉ストローよりも圧倒的に薄くて弱いので、輸送での耐久性は弱く、また保存時には乾燥に弱いです。
アンペラはかつては敷物に使われたというぐらいに強い草ですが、やはり草は草ですので、草を乾燥させたものというのはそれなりの耐久性であるというのが本当のところです。

触感

米粉ストローと同じく全て自然原料からできていますし、竹ストローのようにまさに見たまんまの見た目が特徴なのですが、それらに比べると最大のアドバンテージと言えるのが、触感です。薄いのです。竹ストローや米粉ストローが、どうしても太い筒を咥えているという触感以上にならないのに対して、草ストローはプラスチックストローと同程度の口当たりの軽さであり、違和感という点ではほとんど問題がないでしょう。プラスチックとはもちろん口唇に触れる触感が違いますが、おそらく多くの人は、草そのものであるこの触感に対して、本能的に好意的な感触を受けるのではないかと思います。

廃棄とリサイクル

100%ナチュラルな原料ですので、生ゴミとして廃棄しようが土に埋めようが、よくはないですが自然環境に流出してしまおうが、問題らしい問題は発生しないでしょう。この点は米粉ストローと同じです

安全性と持続可能性

問題は安全性と持続可能性です。
米粉ストローが栽培種であるコメを原材料としているのに対して、アンペラというのは湿地に自生する、いわば雑草でしかありません。果たしてこれを乾燥させて切っただけのものというのは、口に入れて大丈なものなのか… というのは疑問に思います。見た目は大変ナチュラルなのですが、草ストローを作っているベトナムの、多くの河川の湿地帯がどんなものかを知っている者としては、本当に大丈夫か? と思います。
具体的にいうと、輸入時の検疫や食品衛生法(ストローはスプーンなどの他の食器ともに食品衛生法の管理化に入る)を通るのか? ということです。

また、持続可能性にも疑問があります。今はアンペラは湿地に自生している雑草ですので、原料代はタダ同然でいくらでも採取できると思いますが、それが植物でも動物でも魚類でも、こういう形で人間に目をつけられた生物があっという間に絶滅危惧種に追い込まれるのは、私達の歴史が幾度となく証明しています。草ストローがプラスチックストローを代替する勢いで生産されたら、あっという間にアンペラは枯渇してしまうでしょう。しかしアンペラを栽培しようにも、そのノウハウも耕作地もあるわけではないので、そんなにすぐにうまくいくのかは分かりません。
それに対して、手工業レベルの生産性で工業製品としての大量生産体制を作ることができ、現に高級品というよりも中価格品として市場に投入されています。
果たしてこの状況で、乱獲を避けつつ技術革新を促し、市場の見えざる手とやらがうまいこと最適解に導いてくれるものなのでしょうか。

結論と今後の展望

草ストローの魅力は、あまりにもスッキリとしたそのフォルムです。まるでストローになるために生えてきたとしか思えない形状に、何度見ても草以外の何物でもない触感と色合い。誰がどう見てもエコでグリーン。ここだけみればプラスチックを代替する資格は十分です。
しかしプラスチック代替可能性としてのポテンシャルはそこまでで、その後は非常に中途半端です。
値段が中途半端。安さを狙うにも高級品を狙うにも、どちらにも攻め込めない価格。
使い捨てに適した原料だけど、実は大量生産に向いていない。
見た目はばっちりストローだけど、輸送、保存をみるとかろうじて実用レベルという微妙なスペック。

おそらく草ストローは、一種の嗜好品としてに留まると思います。
ぼってりとした米粉ストローに比べて、今現在のプラスチックストローを基準とした「ストローとはこのようなものである」という思い込みにかなり近い存在なので、まずは代替をするのに抵抗がないでしょう。スマートな見た目も抵抗感を低くすると思います。しかしおそらく、原材料の不足か、乱獲禁止の動きか、条件の悪い場所で採取された原料の安全性などの問題により、大量生産による価格下落は頭打ちとなるでしょう。その間に、工業製品としての条件をみたした米粉ストローがシェアを奪っていくことになると思います。