ベトナムでの日本文具の販売戦略を考える
前の記事でベトナムでは玩具よりも文具が売れそうだということを書いたのですが、その文具というのは具体的に何でどのようなものなのかを考察してみます。
日本の文具メーカー
そもそも日本には文具メーカーがどれぐらいあるのか。「たくさんあるだろう」ということは想像がつきますが、実際はどうなのか。
玩具はWikipediaで調べましたが文具はより良いブログの記事がありました。このブログに限らず玩具に比べて文具はよいブログの記事がたくさんあります。(これは後のほど重要なことになります。)
コクヨのケーススタディ
有名どころではコクヨ。「コクヨ ベトナム」で検索してみるとたくさん記事が出てきます。実際にベトナムに工場を持ち現地生産もしているとのこと。
文具店に行って購入してみました。左が現地生産のCampusノート。右がベトナムでよく見る国産ノートです。
中身です。Campusノートの日付欄がベトナム語になっているのが分かるかと思います。紙質についてはCampusのほうがかなり良いように思います。
Campusノートの値段は1万7000ドン(約78円)、国産ノートは8000ドン(約37円)です。2倍の値段差に過ぎないわけですし、差額9000ドンというのはためらうほどの絶対額でもありません。うまくブランド化差別化をはかっていると思います。
ぺんてるのケーススタディ
次に上のブログの記事の2番目にあるぺんてるはどうか。
ぺんてるはコクヨのようにベトナムに進出しているわけではないですが、ぺんてるのサイトで面白い取り組みを見つけました。
商品紹介を記事にしています。これが面白い。文房具というのはこだわりを込めやすいものですので、それがうまく出ている。特に海外ではどうなのだというので、台湾の文具ブームの火付け役のタイガーさんのインタビューは、読んでいると自分が文具にこだわりを持たないのが馬鹿みたいに思えてくる。
このように私がこれを素晴らしい取り組みだというのは、ペンを買ったときにもったいないと思ったからです。
三菱鉛筆のケーススタディ
一番上は三菱鉛筆のUNIです。1本18000ドンでした。真ん中は中国製。MIG晨光 X GOODというものらしく12000ドン。一番下はベトナム国産で4000ドン。これよく見ます。
使い心地でいうと、ベトナム国産4000ドンと、UNIや晨光には圧倒的な違いがあります。しかしUNIと晨光の間にそれほどの違いがあるかというとそれほどでも。デザインも率直に言って晨光は悪くないと思います。そして値段差もそれほどあるわけではない。
むしろ、UNIは黒しかなかったのですが、晨光は青があったので、この2つなら晨光を買うでしょう。なぜならベトナムは習慣上青インクのほうが一般的だからです。
たまたまUNIの青が店頭になかっただけだとは思いますが、もったいないと思いました。
文具は物語の消費に向いている
アンドロイドのスマホのように中国製品の品質は向上しています。
消費者の中にはプレミア感のためなら金に糸目を付けない人はたしかにいます。iPhoneの最新型を買う人はベトナムにだっています。
その間にあって、プレミアもほしいけど現実的な値段のことを考えるあたりの層を狙ってきているのが韓国製品です。
この構図の中で日本製品は中二階となっており、ただ「日本製」「日本品質」を連呼するだけでは立ち行かなくなっています。
コクヨがCampusノートでやった戦略は「プレミアも欲しいけど現実的な値段のことを考えるあたりの層」を狙っているのでしょう。キャンパスノートの日本での値段を考えると現地生産により値段を落としているのだと思います。
これは一つのあり方だと思います。しかしそう簡単にできることではない。
ベトナムでの現地生産はちょっと考えにくいという場合は、品質を上げてくる中国製品や、ブランド戦略の確立した韓国製品と正面から叩きあうのではなくて、違う方向に逃げたほうが良いと思います。
違う方法というのは、ぺんてるがやっていることです。
4000ドンのボールペンではなくて12000ドン18000ドンのボールペンを買う理由は何なのか。作り手のこだわり、使い手のこだわり、開発に至った経緯はなんなのか。どこのどういう人がこれを使っているのか。そういうことを説明して、なぜこれがほしいのかの物語を見せてあげることが必要なのではないかと思います。
そして文具というのは、非常にそれがしやすい分野のものだと思います。